なぜ、起業や会社設⽴の相談を“税理⼠”にするべきなのか?

こんにちは。『かもがわ税理士事務所プラス』の加茂川です。
今回は、起業しようとしているあなたが“損をしない”ための、「税理士活用術」をお教えしたいと思います。

開業前に税理⼠に相談するメリット

もっと早くに相談してくれていれば損しなくて済んだのに・・・

税理士はご存知のように税の専門家です。おおまかに言えば「個人や企業が法に則った税務会計を行うよう指導しサポートする」ことを中心業務として、その他さまざまな付帯サービスを提供しています。

起業するのであれば税務会計を避けては通れませんが、それは開業後のことですから「税理士への相談は開業後必要になったタイミングで」とお考えの方が多いと思います。

実際、ほとんどの方が最初の決算期に、税務申告の期限が迫ってきて初めて相談に来られます。

「決算書や申告書の作り方がわからないので教えてほしい」
「自分でやってみたけど、合っているかどうかわからないので見てほしい」
といったご相談が大半です。そして自力で作成した決算書は十中八九、間違いだらけです。

決算書を修正するには間に合いますが、私は「もっと早くに、できれば開業する前に相談していただいていたら損をしなくて済んだのに・・・」と、とても残念な気持ちになるのです。

損というのは税金を多く払う羽目になるというだけではなく、創業融資や後々の資金繰りに関わる損も含みます。
開業前にもっとよく考えればよかった、開業時にこれをやっておけばよかった、といった「後からでは手遅れ」になることを知らずに損してしまうケースが少なくないのはとても残念です。

税理士は開業後のことを知る専門家。だからこそ開業前から相談するメリットがあります。

具体的な「損」については後述しますが、「相談者が損している」と気付けるのも、損していることを残念がるのも、税理士ならではと言えます。
なぜなら税理士は基本的に顧客と継続的にお付き合いし、税務会計業務を通じて開業後の経営状況を把握する立場だからです。顧客の経営が上手くいくことを願わない税理士はいないでしょう。

ですから税理士は資金繰りの相談をはじめ様々な経営のお悩みについても相談に乗ります。当事務所も「経営者様の良き相談相手」として様々なご相談に応じています。

ちなみに開業に携わる専門家としては、登記を行う司法書士や許認可の申請を行う行政書士が挙げられますが、いずれもスポット的なお付き合いとなるため開業後のことは知り得ません。

開業後のことを知り、気にかける専門家は税理士しかいません。だからこそ、できれば開業する前に相談してもらって、損をしないようにサポートさせてもらいたいと考えるのです。

あなたが起業する目的は何でしょうか?
起業して開業することは目先の目標であって真の目的ではないですよね?
会社を設立あるいは個人事業を開業した後も事業は続いていきます。開業することが目的ではなく、事業を存続し、成功させることこそがあなたの目的のはずです。
あなたの目的を共有して支援することができる(その立場にある)税理士に、起業・開業の相談をするのは理にかなっているのではないでしょうか。

お金の損をしないために!最初が肝心な4つのこと

前置きが長くなりましたが、「損」をしないために開業前に知っていただきたいことを説明していきます。

① 創業時しか申し込めない「創業融資」

日本政策金融公庫の創業融資は、起業したてで実績がない人でも事業資金(設備資金・運転資金)を借りられる融資制度です。申し込めるのは「新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方」に限られます。

  • 無担保・無保証人融資
  • 通常融資より低い利率
  • 長期で返済可能

このように条件が良いのでぜひ最大限活用したいところですが、当然審査があります。審査を通過し、なおかつ多くの融資を受けるためには、事前の準備が重要になってきます。

創業計画書のブラッシュアップ

初めて公庫と取り引きする時は、申し込みをする人(事業主)が創業計画書や企業概要書を作成します。計画が独りよがりでなく客観的に評価できるものかなど、ポイントを押さえて念入りにブラッシュアップすることが大切です。

面談シミュレーション

融資担当者との面談もありますので、事前にどんな質問をされるかを想定して、シミュレーションをしておけば安心ですよね。さらに、創業計画どおりに売上を上げられなかった場合の打開策、代替案なども複数答えられるようにしておけば、融資担当者を納得させるだけでなく実際に躓いた時にも慌てずに済みます。

税理士の紹介

税理士の紹介があれば有利になります。当然ながら、税理士は頼まれれば誰にでも紹介をするわけではありません。紹介するにあたって税理士がさまざまな側面から厳しくチェックするからこそ、信用度がアップするのです。

創業融資の申し込みを自力で頑張ろうとする人もいらっしゃいますが、融資に強い税理士のサポートを受けてしっかりと準備をすれば500万円借りられたはずなのに、自力で頑張った結果300万円しか借りられなかった、というような残念な事例を今までたくさん見てきました。

創業融資をメインの資金源にと考えるなら、税理士に相談するのが早道かつ有効、同時に事業計画に潜むリスクを洗い出し修正することによって自信を持って開業できるというメリットもありますので、ぜひ検討してみてください。

当事務所では、会社設立の手続き代行と併せて創業融資の申し込みをお手伝いしており、ノウハウも実績も豊富です。融資を獲得するためだけでなく“実際の事業を成功に導くこと”を第一にサポートしていますので、「融資を受けられても本当に上手くいくかどうか不安」という方もまずはお気軽にご相談ください。

② 申請期限を過ぎると受けられない「青色申告の特典」

税金の申告方法に「青色申告」と「白色申告」の2種類があるのはご存知かと思います。個人も法人もどちらかの方法で申告します(個人は所得税、法人は法人税を申告)。

青色申告は複式簿記で帳簿をつけることが義務付けられており、簿記の知識がない人にとってはハードルが高く感じられるかもしれませんが、青色申告を選べば税制上の特典が受けられます。個人事業主でも法人でも、青色申告をしなければ確実に損することになります。

開業したら期限内に申請を!

青色申告をするには事前に申請を行う必要があります。
申請には期限があり、期限内に申請しなければその年度は青色申告をすることができません。

個人と法人では申請期限が異なります。

個人事業主法人
申請期限
(初年度)
事業を開始した日から2カ月以内設立日から3カ月以内
または設立事業年度終了の日のいずれか早い日
申請期限
(次年度以降)
青色申告の承認を受けようとする年の3月15日まで青色申告によって申告書を提出しようとする事業年度開始の日の前日まで

申請は税務署に「青色申告の承認申請書」を提出するだけです。書き方も難しくはありません。不安であれば税務署へ足を運んで、職員に聞きながら書くと良いでしょう。

青色申告の主な特典

個人と法人共通の特典、個人のみの特典、法人のみの特典があります。
下記は代表的な特典です。他にもさまざまな特典があり、いずれも適用条件などが細かく決まっており、事業主が全てを把握して活用するのはなかなか困難です。その点でも税理士のサポートがあれば損をしないで済むでしょう。

共通

欠損金の繰越控除・繰戻還付
赤字を翌年以降に繰り越せる。個人は3年、法人は10年。
また、赤字の年の前年が黒字であった場合に、赤字を前年分に繰り戻して税額の還付を受けることができる。

少額減価償却資産の特例
単価30万円未満の減価償却資産を一括で経費計上できる。(年間上限あり)

貸倒引当金
売掛金や受取手形などの債権において、将来的に貸倒の発生が見込まれる金額を損金として算入することができる。(法人は資本金が1億円以下の中小企業で、大企業と資本関係がない、などの条件あり)

個人事業主のみ

青色申告特別控除
最高65万円を所得から控除できる。(適用条件により65万円控除、55万円控除、10万円控除の3種類)

青色事業専従者給与
事業者と同居する家族従業員への給与を経費にできる。

法人(中小企業)のみ

特別償却又は税額控除
中小企業者等が機械装置などの設備投資を行った際に、取得価額の30%に相当する「特別償却」または、7%の「税額控除」を選択して適用できる。
※特別償却とは、償却を前倒しして課税を繰り延べる措置。税額控除とは、納めるべき税額から一定額が特別に控除される免税措置。

※令和6年4月現在

③ 一度決めたら変えにくい「役員報酬」

会社を設立するなら「役員報酬をいくらにするか」も、後々の資金繰りなどに大きな差が出る項目です。
自分(代表取締役)の役員報酬をいくらにするか、他に取締役や監査役などを置く場合はその役員報酬をいくらにするか、よく考えて決めなければなりません。

では役員報酬は誰が決めるのかといえば、中小企業の場合は株主総会で決議するのが一般的、ですが、開業したての小さな会社では株主=社長であることが大半であるため、実質的には社長自身が決めることが多くなります。

役員報酬を決める時期ですが、会社設立時は設立後3カ月以内に決めなければなりません。まだ利益が出ていない段階でもあり、判断しづらいですよね。

事業が順調にいくことを前提として役員報酬を高くしたがために、資金繰りが苦しくなったというケースは実際よくあります。
役員報酬を変更できるのは年に一度(期首3カ月以内)です。毎年見直すチャンスはあるわけですが、「自分はともかく他の役員の報酬を減らすのは気が引ける」「減額すれば辞めてしまうのでは」という社長の声もよく聞かれます。揉め事を避けるためにも最初が肝心です。

かといって少なければ良いというものでもありません。個人の生活費はもちろんのこと将来受け取る年金額のことも考えねばなりませんし、税金対策としても個人の所得税と会社の法人税のバランスを考えて、慎重に決める必要があります。

役員報酬のシミュレーションをご要望の方は、当事務所へお問い合わせください。あくまで予測ですが、法人税・所得税・住民税・社会保険料の合計額が適正となる役員報酬額をご提案いたします。

④ 「決算月をいつにするか」も重要

会社を設立する場合、決算月を決める必要があります。決算月は事業年度の最後の月で、決算月に決算報告書を作成し、その2ヵ月後まで(延長することはできます)に税金の申告と納税を行います。

決算月は、会社設立日(登記日)から1年以内であれば自由に決められますが、あまり考えずに決めると(例えば、世の中的に3月決算が多いという理由で3月にするなど)後々後悔することになりかねません。

「繁忙期」を避けるのが最も重要

決算は会社にとって大切かつ大変な業務ですから、繁忙期と決算月が重なるのを避けることが最も重要といえます。逆にいえば1年で最も閑散な月を決算月にするのが良いということです。
特に棚卸しが必要な業種は決算月に棚卸しをしなければなりませんので(決算書に棚卸資産を記載する必要があるため)繁忙期は絶対に避けるべきですね。

また予想より大幅に黒字あるいは赤字になった場合などは、税理士に相談して対策を練る必要が生じます。その点も踏まえると、税理士の繁忙期=多くの会社の決算が集中する3月とその前後を避けるのも賢い選択と言えるでしょう。

当事務所では、開業後の売上予測や繁忙期・閑散期予測も含めてトータル的にベストな決算月をご提案することができますので、ご相談ください。

個人か会社か?迷っている人にも税理士相談がおすすめ

あなたは既に、個人事業主として開業するか、会社を設立するか決めているでしょうか?
迷っているなら、税理士に相談するのも一つの手です。税理士に相談すれば、少なくとも、見込まれる売上や利益に基づいて「税務上どちらが有利か」を知ることができるでしょう。起業・開業支援を行なっている事務所であれば、他にもさまざまなアドバイスを受けることができます。

例えば、当事務所では

  • 税金と社会保険のトータル金額予測
  • 開業時に必要になる費用
  • 経費にできる範囲

などの比較における個人と会社のメリット・デメリットをお伝えし、

  • 社会的信用が重要な事業か
  • 最初から従業員を雇う必要があるか
  • 資金調達の必要があるか(開業時〜将来)
  • 事業拡大をどの程度望むか

などのヒアリングに基づいて、向き不向きをお伝えすることができます。

また会社設立が有利である場合、株式会社にする場合と合同会社にする場合の違い(設立費用、資金調達への影響ほか)についてもご説明します。

個人事業主から始めて会社にするのもあり

従来はまず個人事業主として開業し、その後に法人成りすることで、消費税の免税期間を最大限活用することが多かったのですが、2023年10月から始まったインボイス制度により、消費税免税のメリットを受けられなくなった業種が増えました。そのため、初めから、会社設立を選択する方が増えているかもしれません。

とはいえ、いきなり会社をつくるのはハードルが高いと感じるなら、個人事業主から始めて利益が上がりそうなら会社に変えるのもありです。

当事務所のお客様も、個人事業主として開業し、1年〜数年後に法人成りというパターンが一番多いです。
個人にせよ会社にせよ、まずは一歩踏み出すための地盤を強固にすることが重要です。

当事務所では起業前のカウンセリングを初回無料で行なっています。起業に対する不安、事業計画、資金のことなど、まずはお気軽にご相談ください。
起業相談・開業サポートのご案内
当事務所にご相談いただく一番のメリットは「ビジネスモデルのブラッシュアップ」ができることです。
ただ商品やサービスを提供するだけではなく、どう宣伝するか、どうすればより顧客満足度が高くなるか、効率的に行えるか等を一緒に考えることで、今あなたが考えているビジネスモデルをより良いものにします。

開業当初から顧問契約するメリット

上記にご紹介した通り、当事務所では初回相談を無料で承っています。開業後に顧問契約等をしていただけなくても、誠意をもって相談に乗ることにより、評判が良くなれば、私たちにとってもプラスになるはずだと考えています。

とはいえ、会社を設立するなら、税理士と顧問契約するメリットも知っておいていただきたいと思います。

開業当初から税理士と顧問契約するメリットは主に2つです。

①ややこしい経理業務に煩わされず経営に集中できる
②追徴課税のリスクを未然に防げる

① ややこしい経理業務に煩わされず経営に集中できる

会社において経理及び税務会計は必須のものです。やらないわけにはいきません。経理のプロを雇う余裕があれば良いですが、小さな会社では最初は社長が日々の経理から期末の決算までしなければならない場合がほとんどです。

ー やらねばならないなら ー
簡単なほうが良いですよね?
自社に合った方法が良いですよね?

ー なおかつ、どうせやるなら ー
経営に役立つ会計のほうが良いですよね?
銀行からの評価が高いほうが良いですよね?
税務調査が来にくいほうが良いですよね?

税理士は、そんな会計の仕組みを設計することができます。

カスタマイズとIT活用で、経営に集中しながら、経理も最少の手間できっちりと。

当事務所では最初の3カ月ほどは帳簿の入力から全て当事務所が請け負います。その目的は基本的な取引内容や取引量などを把握して、顧客の会社に合ったやり方を見極めることにあります。
会計ソフトは共通のクラウド会計ソフトを用いますが「この会社ならこういう勘定科目があった方が良い、こういう補助簿があった方が良い」といったカスタマイズを行なった上で顧客に引き継いでいます。

その後のやりとりも各種のITツールを活用して効率よく、またご質問やご相談がある際も、チャットワーク、zoom等で迅速にお答えしています。

開業当初こそ、経営に集中して事業を早く軌道に乗せたいですよね?
もちろん、税務会計を理解することは経営においても重要ですので、税理士に丸投げすれば良いというわけではありません。それを前提として、私たちはできる限りわかりやすくご説明し、経営者がまだ理解していない段階から「経営に役立つ会計」になるようにサポートしています。

② 追徴課税のリスクを未然に防げる

当コラムの冒頭でも述べましたが、大抵の起業家は初めての決算期に、間違いだらけの決算書を持って駆け込んで来られます。

間違いだらけなのは当然のことと言えます。まず簿記の知識がなければ正しく帳簿をつけることができませんし、簿記だけわかっていても会計や税務がわかっていなければ正しい決算書や納税申告書は作れません。帳簿からめちゃくちゃであれば、税理士とはいえ修正にかなりの時間を要することになります。

もし、間違いだらけの決算書をもとに納税するとどうなるでしょうか?
税務署からすぐに指摘が入れば修正申告することになりますが、見逃されることもよくあります。指摘がないので大丈夫なのだろうと思っていたら、数年後に突然税務調査が入り、開業時まで遡って延滞税や追徴課税を課せられるといったケースはごまんとあるのです。

ちなみに当事務所の顧問先には税務調査が入る回数がとても少ないです。なぜなら過去の税務調査において、指摘されることがあまりにも少なかったことや、当事務所はできる限り、疑義が生じにくい決算書類の作成を心掛けているからです。

決算書や納税申告書の作成を素人が行うことのリスクを考えれば、開業当初から税理士と顧問契約をして日々の帳簿からきちんとしておく方が確実に安全です。

各種専門家のプラットフォームとしても税理士事務所の活用がおすすめ

税理士事務所は「必要な時に必要な人や会社を紹介するプラットフォーム」の役割も担っています。

金融機関、各種士業(司法書士、行政書士、社会保険労務士、弁護士など)、不動産会社、内装業者、ホームページ制作業者、広告代理店etc.

税理士の人脈にもよりますが、一般的には税理士事務所と付き合っておけば、ワンストップでさまざまな人や会社と繋がることができます。

さらに、当事務所では、経費節約術として、専門家に頼らず自力でできることもお伝えしています。
例えば、社員が少ないうちは、社会保険や雇用保険の手続きや計算は比較的簡単ですので、自社で行う方法もお伝えしています。(もちろん、社会保険労務士のご紹介もいたします)
また、助成金や補助金の申請は、専門業者に手数料を払って依頼することもできますが、商工会・商工会議所へ行けばサポートしてくれます。

このような、税理士が持つ人脈や知識も大いに活用して、いろいろなところに潜む「損」のリスクを避け、あなたの事業を成功させていただきたいと願っています。